【専門解説】なぜ「次世代足場」が必要なのか?
―従来足場を超える作業性・安全性・効率性の進化―
出典:ダイサン
建設現場では今、「次世代足場」の採用が急速に広がっています。
昭和30年前後から約70年にわたり使用されてきた「枠組足場」に代わり、次世代足場が新しい標準へと移行しつつあるのです。
では、なぜ次世代足場が必要とされるのでしょうか?
その背景には、「安全性」「作業性」「効率性」「現場の複雑化」など、現代の建設現場が抱える課題がありました。
本記事では、従来足場との比較を踏まえながら次世代足場が登場した理由と、その特長をわかりやすく解説します。
Contents
1.次世代足場とは

出典:ダイサン
次世代足場は、従来の足場に代わる新しい標準を目指して開発されたシステム足場です。昭和30年代以降、長年にわたって建設現場の主力として使用されてきた枠組足場は、高い強度を持つ一方で、作業性や運搬効率、現場対応力といった面では課題も抱えていました。
その後、住宅工事や中層建築を中心に普及したくさび緊結式足場は、施工性や柔軟性の面で大きく進化しましたが、公共工事や大規模建築の現場では、さらに高い安全性や効率性が求められるようになっています。
こうした背景を受けて、くさび緊結式足場をベースにしながら、作業性・安全性・運搬効率・大規模工事への対応力を総合的に高めたものが「次世代足場」です。
現在では、公共工事を含む大規模現場を中心に採用が進んでおり、今後は安全規制の強化や人手不足の進行を背景に、次世代足場の普及はさらに加速していくと考えられます。
2.従来の枠組足場のメリット

枠組足場は長い歴史があり、今でも多くの現場で使用されています。
特に、次のような強みを持っています。
■高い支持力で重荷重に対応
- 脚柱の許容支持力が高く、最大積載荷重を大きく設定できるため、土木工事や鉄筋コンクリート造の新築工事にも対応
- 型枠を支える「支保工」として利用することが可能
■大組み・大払し工法が可能
- 全層・全スパンの両面に交差筋かいを設置し、脚柱接続部に抜け止めを施すことで、クレーンを使った“大組み・大払し工法(ブロック化工法)”が可能
- “大組み・大払し工法(ブロック化工法)”により高所作業の工数削減が可能
3.枠組足場のデメリット
(現場ニーズに合わなくなってきた理由)

枠組足場は長い歴史があり今でも多くの現場で使用されていますが、現代の現場では、次のような課題が顕著になってきました。
■枠組足場の課題
1層高さが低く、作業性・通行性が悪い
- 約1700mmと低く、材料を持った移動が困難
- 作業姿勢が悪くなり、負担が大きい
形状変更が難しいため、複雑な躯体に不向き
- 足場幅や作業床高さの「途中変更」がほぼ不可能
- 現代建築が持つ複雑な意匠や外形に追従しにくい
手すり先行工法に適した部材が重く、運用が大変
- 専用手すり枠が重く大型
- 設置・運搬の負荷・コストが大きい
建枠が非常にかさ張る
- トラック積載効率が悪く、運送コストが大きい
- 資材置き場でも広いスペースが必要
こうした現場での課題やニーズに対し、作業性・効率性の実現を目指し、次世代足場が開発されました。
4.次世代足場の主な特長
出典:ダイサン
次世代足場には、各メーカーが独自のシステムを展開していますが、共通して次のような特長を備えています。
■1層高さが1800〜1900mmで作業性が大幅に向上
枠組足場より、1層高さが10〜20cm高く設計されています。そのため、現場の「通行性」「作業効率」が大きく改善します。
- 材料の持ち運びがしやすい
- 作業者の姿勢がラク
- 通路としての安全性・快適性が高い
■手すり先行工法の採用が前提
次世代足場は、「手すり先行工法」による施工を前提として設計されています。そのため、労働安全衛生規則の改正や安全意識の高まりにも適合しているといえます。
- 専用の軽量手すりが標準化されている
- 組立・解体時の墜落リスクを大幅に低減できる
■大組み・大払し工法が可能(抜け止め機能を標準搭載)
次世代足場の支柱と布材や腕木材の緊結部には、抜け止め機能が付加されています。そのため、枠組足場の強みを引き継ぎつつ、さらに安全性と効率を高めた構造になっています。
- 地上でブロック状に組み上げ、クレーンで一括吊り下げ
- 高所作業の大幅な削減
■仮設工業会「システム承認」を取得(実大試験で強度が明確)
次世代足場は、一般社団法人仮設工業会の「システム承認」を取得しています。取得時に実代実験を行っていることから強度の裏付けがあり、公共工事でも採用が進みやすい足場です。
- 実大試験を実施し、支柱1本あたりの許容支持力を確認
- 専用補強材でさらに支持力アップも可能
- 支保工として使用できる(枠組足場には劣るが実用レベル)
■かさばる部材がなく、運搬効率が劇的に向上
次世代足場には、枠組足場のような巨大な「建枠」がありません。物流面の効率向上も、次世代足場が選ばれる大きな理由です。
- トラック積載効率が改善
- 運送コストを大幅削減
- 資材センターの保管効率アップ
- 現場での仮置きスペースを確保しやすい
5.NETIS登録技術である次世代足場は、公共工事でも採用拡大
多くのメーカーが、自社の次世代足場をNETIS(新技術情報提供システム)へ登録しています。登録されている技術は、国土交通省により生産性向上・安全性向上などの効果が認められたものです。
建設会社にとって、NETIS登録技術を採用することは単なる「新しい工法の導入」ではなく、工事成績・安全性・生産性・コスト最適化などに直結する“経営メリット” を生みます。
■工事成績評定で加点され、会社評価・入札競争力が上がる
公共工事では、NETIS登録技術を活用した場合、その内容や効果に応じて、施工計画の評価や工事成績評定において評価対象となるケースがあります。
工事成績評定は、将来の公共工事受注や企業評価にも影響するため、NETIS技術の活用は、中長期的な入札競争力の強化につながる施策として位置付けることができます。
■安全性・生産性向上により、現場リスクや人手不足解消が期待できる
NETIS登録技術は、生産性向上・安全性向上・工期短縮・品質向上・環境負荷低減などに寄与する技術であることが前提とされています。そのため、足場を含む仮設工事の分野においては、次のような効果が期待されます。
- 墜落・転落事故リスクの低減
- 労災発生リスクや損害補償リスクの抑制
- 安全管理にかかる負担やコストの軽減
- 高リスク作業の削減による現場全体の安定化
特に足場を含む仮設工事は、建設工事の中でも事故リスクが高い工程であり、安全性の高い技術を選択することは、現場管理上だけでなく経営上の重要な判断要素となりつつあります。
また、生産性向上の観点では、NETIS登録技術の採用により以下の効果が見込まれます。
- 組立・解体作業の時間短縮
- 作業員1人あたりの負担軽減
- 工程の平準化による工程遅延リスクの低減
人手不足や技能者の高齢化が進む中で、NETIS登録技術の活用は、限られた人員でも安定した施工を行うための有効な手段といえます。
■技術資料として公的に公開されるため、信頼性・透明性が高い
NETISに登録された技術情報は、国土交通省のシステム上で公的に公開されます。公開情報には、以下のような内容が含まれます。
- 技術の概要・特徴
- 従来技術との比較データ
- 現場で確認された効果
- 施工実績
- 改善・更新の履歴
これにより、建設会社は「客観的なデータをもとに採用判断できる」「公的に認められた技術を使っている」という点で、信用度が非常に高まります。
また、発注者や監督員に対しても、客観的な根拠をもって技術採用の説明ができるという点は大きなメリットです。NETIS登録技術を活用していること自体が、技術選定の透明性や信頼性を高める要素となります。
6.次世代足場は「現場の課題解決」から生まれた新しい標準
出典:ダイサン
次世代足場が必要になった理由は明確です。
従来の枠組足場では難しかった、安全性・作業性・通行性・施工性・運搬効率といった現場ニーズを、次世代足場は高いレベルで満たしています。次世代足場は、「安全で効率的な施工」を実現するための新しいインフラと言えるでしょう。
足場メーカーとして、私たちも次世代足場の普及を進め、これからの建設現場の安全と生産性向上に貢献していきます。