日本の建設を支えてきた「足場」の進化と技術革新
―足場の歴史を徹底解説―
出典:ダイサン
建設現場に欠かせない足場は、作業者の安全と作業効率を支える重要な仮設構造物です。
しかし、現在当たり前に使われている枠組足場やくさび緊結式足場(クサビ式足場)も、最初から存在していたわけではありません。足場の技術は、日本の建築文化や産業発展とともに大きく変化してきました。
本記事では、古代の丸太足場から始まり、鋼製足場の登場、規格化、そしてくさび緊結式足場の普及へと続く足場の歴史をわかりやすく解説します。
Contents
1.足場とは?建設現場で使われる「足場」の定義

出典:ダイサン
一般的な「足場」は足がかりや踏み場を意味しますが、建設業界における足場はより限定された専門用語として使われています。
■建設業界での「足場」の定義
高所作業を行う作業者が、安全で効率的に作業を行えるように設置する仮設の作業床と、それを支える支柱・手すり・布板などの構造物一式を指します。
特に重要なポイントは「作業のために設けられる構造物である」ということです。
- 作業のために設置→足場
- 資材仮置きのためのステージ→足場ではない
この区別は、安全基準や施工基準に大きく関わります。
2.日本における足場の歴史
出典:仮設工業会(日本における足場の歴史)
日本で足場がいつから使われ始めたかは明確ではありませんが、歴史資料や発掘調査から、非常に古い時代から存在していたことがわかっています。
■足場の起源
奈良時代:平城京の建設で使われた丸太足場
奈良時代の都「平城京」の跡地では、建物の柱跡周辺から多数の足場穴(丸太を立てた跡)が発見されました。これにより、当時すでに丸太を使用した簡易的な足場が採用されていた可能性が高いことが分かっています。
江戸〜明治:寺社仏閣や天守閣を支えた丸太足場
その後も、寺社仏閣の造営、城郭の修繕などで丸太足場は広く使われました。浮世絵などの建築風景からも、江戸〜明治の建設現場では丸太足場が主流であったことが確認できます。この時代、数百年にわたり日本の足場は「丸太」が中心素材でした。
■昭和:足場の転換期。鋼製化と規格化の時代
昭和に入り、建物の高層化・都市化が進んだことで、より安全で強度の高い足場が求められるようになります。
戦後復興期:枠組足場(ビティ足場)の登場
昭和20年代後半、日本にアメリカから枠組足場が輸入されます。これをきっかけに、日本では「ビティ・スキャホード株式会社」が設立されて建枠の輸入・製造が始まり、「日本ビティ株式会社」によって国内製造が本格化しました。
当時の建設現場で革新的だったこの足場は、
- 組み立てやすさ
- 強固な構造
- 高所作業の安全性向上
といったメリットから瞬く間に普及し、「ビティ足場」という名称で定着しました。
単管足場の普及:緊結金具(クランプ)登場による自由度の向上
少し遅れて、鋼管(単管)を緊結するための緊結金具(クランプ)が国内で製造されるようになると、単管足場が普及します。
単管足場は、丸太よりも高い強度を持ち、建物形状に合わせて柔軟に組めるため、複雑な形状の建物にも対応できる自由度の高い足場として広まりました。
■くさび緊結式足場(クサビ式足場)の誕生と普及
1980年代、日本の足場の歴史において大きな転換点が訪れます。
1980年(昭和55年):日本初のくさび緊結式足場「ビケ足場」が登場
1980年、株式会社大三機工商会(現:株式会社ダイサン)が、日本初となるくさび緊結式足場「ビケ足場」の製造・販売を開始しました。
ビケ足場は、
- ハンマー1本で組立・解体ができる施工性
- 高い安全性
- 優れた拡張性
という特長によって、住宅施工の主力足場として急速に普及しました。
現在では、くさび緊結式足場は住宅工事に限らず、
- アパート
- マンション
- 中低層ビル
- 商業施設
など、多様な建設現場で使われ、外部・内部足場の分野で大きなシェアを持つ足場となっています。
1981年(昭和56年):足場の規格化が進み、安全性が大幅に向上
1981年、「鋼管足場用の部材および附属金具の規格」が制定されました。
この規格では、以下のような足場部材の材質・構造・強度が細かく定められました。
- 建枠
- 交差筋かい
- 緊結金具(クランプ)
- 壁つなぎ金具
- 単管ジョイント
- 持ち送り枠
この規格に違反した場合には厳しい罰則が課され、足場の安全性が飛躍的に向上するきっかけとなりました。
■足場は「安全性・効率性・品質」を求めて進化し続ける
足場の歴史を振り返ると、その進化の背景には常に「安全向上」と「施工性向上」の需要があります。
近年では、
- 足場×DX(デジタル化)
- BIMによる足場計画
- 3Dスキャンを活用した現場調査
- 機械化・省力化による安全性向上
など、足場は単なる作業床ではなく、現場全体の生産性を左右する重要な技術インフラとして進化しています。
3.足場の歴史は建築の歴史とともにある

奈良時代の丸太足場から始まり、戦後の枠組足場、単管足場、そしてくさび緊結式足場へと進化してきた足場は、時代ごとの建築技術や社会のニーズに合わせて発展してきました。
そして今、足場はDXや新工法の登場によって、さらに新しいステージへ進もうとしています。
足場メーカーとして私たちは、歴史から学びつつ、「より安全・より効率的・使いやすい足場」を追求し、これからの建設業界を支えていきます。